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『有名人が贈る━こころに残る一冊の本』
神戸新聞(1983年1月21日)
 卒業生より、上のような新聞の切り抜き記事が送られてきました。
 1983年というと、今年が2009年ですから26年前となります。私は今、66歳ですから、40歳の時の記事です。
 新聞記事を探すと、朝日新聞の記事が見つかりました。下記の写真(1977年12月1日)
 さらに探すと、神戸新聞の記事が見つかりました。アンケートを自費出版した記事です。1978年7月7日とありました。
 上記の神戸新聞の記事は、自費出版した『有名人が贈る━こころに残る一冊の本』を買っての記事なのでしょう。「いまどき珍しい熱中先生だ」には、そういう時もあったんだと、赤面の至りです。

↑クリック(拡大写真=12万7070バイトにリンク)
 今から32年前の新聞記事なので、文章が不鮮明となっています。
 以下、OCR(文字認識ソフト)で読み取って、テキストで表示します。
 さっぱり本を読まない現代高校生に読書をさせるにはどうしたらいいか、と考えあぐねた相生市の県立相 生産業高校の一教諭が、学者や文化人、有名人に往復はがきで「高校生に勧める一冊の本」を求めたところ、二十九日までに百八十二人から返事があった。「いなかの高校教師のお願にこんなに多ぐの人がこたえてくれるとは思わなかった。各界の立派な人たちが味わった読書の喜びを共有できれば・・」と、いま授業前に生徒にはがきを読ませ、本への親しみを教え込んでいる。
 相生産業高校は普通、商業、被服、機械、造船の各があり、生徒数は約九百五十人。同校で日本史を教えてい有政一昭教諭(三五)は授業を始める前に、尊敬する人物や感銘を受けた本をあげさせてみたが、生徒の日から出るのはリンカーン、野口英世など小学校の教科書に出てくる人物やその伝記ばかりだった。そこで高校時代に読むべき本を読ませるためにと思いついたのがこのアンケート。はがき代や印刷費三万七千円は自弁で八月から往復はがきを出しはじめた。
 高校教科書の執筆者をはじめ、小説家、学者、文化人、政治家、芸能人と多彩な顔ぶれをえらんだが、思わなかったほど返事がきた。
 日本医師会の武見太郎会長の推薦書は「吉田洋一著・零の発見」。数学の教育が式を解くことのみで、戯学そのものを知りません。最適の入門書と思います」。日本社会党顧問い社会主義協会問題で渦中の人、向坂逸郎さんは「資本論。私の生涯をたのしくしてくれた本です。世の中を正しくしてくれる本です」とあった。作家のの藤義一さんは「中島敦著李陵。天才でないと書けないものだと感銘した。宮刑を受け、幽閉の身で、あの膨大な史記を書くのがおれの身をえぐった」。
 丸山真男・元東大教授(政治思想史)は「ロマン・ロラン著べートーベンの生涯。本当に強じんな理想主義とは何かを教えてくた」。梅原猛・京都芸大学長(哲学)は「ニーチェのツァラトウストラはかく語りき。私はニーチエによって人生を深く学びました。中学三年の時からニーチェは私の愛読書です」。小林直樹・東大教授(憲法)は「ラスキの近代国家における自由。高校生諸君にはぜひ一度は読んでもらいたい本の筆頭です。その末尾の言葉にあるように、自由に対す尊敬あってはじめて人間は真に美しいものになり得るこせをよく知ってもらいたいのです」と書いてくれた。ほかに奈良本辰也・元立命館大教授(日本近世史)は「ハイネ・独逸古典哲学の終末」、家永三郎・東教大教授(日本思憩史)は「アンデルセン童話集」、女優の若尾文子さんは「和辻哲郎著・鎖国」、落語家三遊亭円生さんは.「ユーゴのレ・ミゼラブル」、桂米朝
さんは「正岡子規集」、歌手三波春夫さんは「吉川英治の宮本武蔵」をあげていた。
 有政教諭は、日本史、地理を教えている五クラス約二百三十人の生徒にこのはがきを読ませるとともに著者の横顔や本の紹介、「読書のすすめ」を説いている。生徒たちも真剣な目ではがきに見入っているといい「読書の大切さを知らせる上で、格好の教材となった」と有政教諭。
 さらに全校生徒が活用出来るように寄せられたはがきまとめたパンフレットづくりも計画中。
 今は鬼籍に入られた方も多くなりました。
 今読んでも、著名人の「一冊の本」を読むと、熱く血潮がたぎります。
 是非、テキスト版で紹介したいと思いました。

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