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ごあいさつ

第十二回は赤穂市立歴史博物館編『検証・赤穂事件2』

推薦の図説と問われて

 「忠臣蔵」のホームページをアップしたのが
1996(平成8)年である。毎月14日に忠臣蔵
新聞などを掲載してきて今回で200号を数え
る。お陰で色んな方からメールが届く。多い時
には30通になるときもある。少ないときでも毎
日1通はある。IT革命の恩恵を受けていると実
感している。
 そんな中で、最初に読む「忠臣蔵」の本はと
か、史料中心の本はとか、書籍に関する問い
合わせも増えてきた。今回は推薦する図説を
紹介する。図説に関してはたくさん発行され、
私もお世話になっている本があるが、特に感
動した本を2回に分けて紹介したい。今回は
赤穂事件2を取り上げる。
構成
 その2は「討ち入りへ、そして本懐、事件後」
を扱っている。 
 
妥協を配した、質の高い編集方針
『忠臣蔵第二巻』の図説編という性格
 多くの図説が発売されている。対象を一般の読者としているため、かなり妥協的な部分が見
られる。しかし、『検証・赤穂事件1・2』はそうした妥協を配して、「たんたん」と図説史料の積み
重ねを行っている。先に赤穂市が発行した史料集『忠臣蔵第二巻』の図説編という性格を持っ
ている。
 カラー図版には人物として吉田忠左衛門が紹介されている。
 地図として元禄14(1701)年の絵図を元に描かれた「四十六士引揚げの経路」が紹介され
ている。
 前回に比して人物・地図が少ない分、絵図がある。富森助右衛門が入手したといわれる「吉
良邸絵図面写」、大石内蔵助を介錯した安場家に伝わる「大石内蔵助良雄切腹之図」、長府
藩が記録した「播州赤穂之城主浅野内匠頭浪人御預記」、当時の状況を伝える「東都芝萬松
山泉岳禅寺略図」などがある。
 その他には長安雅山筆の一連のストーリー絵画がほっと心を癒してくれる。
 今回も秀逸は影印である。私が現在相生市に住んでいる関係で神崎与五郎の『那波十景』
と『神崎与五郎墨跡』にはとても感動した。それ以外では唯一残っているといわれる『井口半
蔵・木村孫右衛門連署起請文』が目を引く。母宛の暇乞い状である『大高源五書状』、妻・義
父宛の離別状・暇乞い状である『大石内蔵助書状』(元禄15年10月朔日)、花岳寺などに当
てた『大石内蔵助書状』(討ち入り直前の12月13日。図版解説には「討ち入りのことが翌日に
決定されるというあわただしい時に、約1.6メートルにも及ぶ長文の書状を認めた事実には驚
嘆せざるをえない」とある。まったく同感である)、米沢藩の武士が討ち入り後の吉良邸の様子
を記録した『大熊弥一右衛門見聞書』(同12月18日)などが紹介されている。
モノクロ図版もすごい
ショッキングな史料も紹介
 モノクロ図版では影印がやはり圧巻である。『赤穂義士随筆』には赤穂浪士の変名や江戸で
の潜伏先が記録されている。内蔵助が文武両道であったことを証明する『大石内蔵助預置候
金銀請払帳』、内蔵助を優柔不断だと責める強硬派の『堀部弥兵衛覚書』が6ページにわたっ
て紹介されている。討ち入り後の大名預けの様子を記録した熊本藩の『浅野内匠頭様御家頼
十七人御預之筋覚書』(堀内伝右衛門筆)も印象深い。非常にショッキングだったのは『赤穂
浪人類族の者一人も居ざる旨村々差入証文』(元禄十六年二月十三日)である。これは竜野
藩の庄屋が大庄屋に「この村には、内蔵助ら46人の親族は1人もいない」と宣言している文書
である。当時の人々の事件に対する状況がよくわかる。

注文とお願い
吉良邸討ち入り時間が不一致
 私はかねがね討ち入りルートと討ち入り時間に関心があった。というのは引揚げルートはか
なり詳細な史料が残されてる。しかし、討ち入りに関しては浪士も幕府も庶民も口をつぐんで
いる。もう一つは討ち入り時間である。引揚げ時間は午前6時頃とどの書物をみても一致して
いる。しかし、吉良邸に討ち入った時間はまちまちである。午前4時が一番多いが、本書60
ページでは「午前三時半ごろ」としている。2時半も内蔵助は表門に立ち続けていたことにな
る。同じく本書96ページには「約2時間の戦闘」としている。こちらは午前4時説である。私は
「忠臣蔵新聞」で内蔵助が不動で立ち続ける限度を約1時間と考えいる。この辺の研究をお
願いしたい。

歴史博物館のもう一つの役割
消滅するアナログ「忠臣蔵映像」のデジタル化
来穂者の要望は「映像ライブラリー」
 私宛てのメールで最近以下のような文面が届いた。
 「せっかく遠くから来たので、まとまった本でも買えるかなと楽しみにしてあちこち見たり、聞
いたりしたのですが、義士のゆかりの地としてのこれはという本が探せませんでした。泉岳寺
周辺ではまとまった本や、ビデオなどがあり、それ以上を期待していたので、探せなくて残
念でした」
 本については図書館や本屋さんにお願いするとして、消滅する可能性の高い忠臣蔵の映
像データをどう、誰が管理するかという問題です。膨大なアナログデータをデジタル化して子
孫に継承する役割を検討する時期に来ていると思います。 

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