相生の観客 相性ピタリ
「ケイショウ」の舞台練習(左が田路真紀さん)=大阪市城東区
 大阪に拠点を置く、あるアマチュア演劇集団が、年1、2回のペースで相生市を公演に訪ねるようになって8年目になる。10、11両日には、同市本郷町のエミーホールで、アメリカの従軍カメラマンの遺品の写真を通じて原爆と戦争を考える劇「ケイショウ」を上演する。「相生の観客は、批評家のような目でなく、スッとお芝居の中に入ってきて楽しんでくれるんです」。相生公演にこだわる理由を、彼らはこう語る。(茂山憲史)

 演劇集団の名は「ユニット企画《UNI(うに)》」。1998年、大阪市で旗揚げした。メンバーは大阪、京都、奈良などに暮らし、大阪府高槻市の練習場を拠点にしている。
 相生公演のスタートは03年。きっかけは、相生市の田路(とう・じ)真紀さん(42)がグループに参加している縁だが、メンバーはJR相生駅前にあるエミーホールの環境と、相生の観客の素朴な雰囲気に心をつかまれた、という。
 エミーホールは00年、駅前に書店を開いた矢野美穂さんが「身近に文化活動をする場所が必要」と感じて、店の2階に併設した約70平方メートルの小ホールだ。グランドピアノが常設され、客席はない。室内楽を楽しむ「サロン」のような雰囲気がある。俳優の目の前に観客がいて、目と目が合い、お互いの表情の変化で情感が交流する。
 「大阪や京都の観客は、家族や知人がほとんど。都会だから演劇のプロを自任するような人もいて、劇の中身ではなく演劇論の批評をいただく」と田路さん。ところが相生では、舞台のあとで名前も知らない初対面の観客に手を握られ、「よかったわ。また来て」と声をかけられる。こんな反応に刺激を受けて、相生通いが続くことになった。
 これまでは「星の王子さま」などを題材にした試演朗読会から市民会館での本公演まで、9回の舞台を踏んだ。戦争と原爆にこだわっている。ほとんどが、脚本・演出を担当するあつみ空光(くう・こ)さん(35)の創作だ。
 何を演じ、どう訴えるか、みんなで話し合う。メンバーは広島、長崎、舞鶴など15回も研修旅行をしてきた。「深くは知らないまま、被爆者たちの話を聞いてしまったんです」と田路さん。直接会って、生の声を聞いて、証言者たちが俳優にのり移る体験をしたという。「繰り返さないために証言を続ける方たちの強い願いをどこまで伝えられるか。私たちは他人顔はできなくなってしまったんです」
 10日午後6時半と11日午後1時半の2回。前売り千円、当日1200円。学生800円。予約は070・6927・4097(田路さん)へ。
朝日新聞サイト版(2010年10月09日付け)

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