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ごあいさつ
第ニ十八回は河出書房新社
西山松之助監修『図説忠臣蔵』

ブロードバンド(光ファイバー)の時代
もう一度、ビデオ撮影の旅へ
先ずデスクワークから
指針になる諸先輩の本をひも解く
そしてフィールドワークへ
 私はこの欄の第四回目に、司波幸作氏の『元禄忠臣蔵の舞台』(←ここをクリック)を紹介しました。その本は、今も私たち夫婦に全国の義士関係の史跡巡りという大きな生きがいを与えてくれた1冊の本です。
 そこでも書きましたが、この本のガイドとして優れているのは、苦労して現地を取材していることである。北は岩手県一関市の祥雲寺に行っては「浅野内匠頭供養塔」を撮影している。
南は鹿児島県鹿児島市に行っては西郷隆盛が郷中教育の教材に利用したという「赤穂義士伝」を撮影している。
 忠臣蔵史蹟めぐりの色々な本を読むうちに、見たり、読んだりした人のためになる自分らしさのガイドブックが作りたくなった。既に「史跡忠臣蔵」の引き上げルートの部(←ここをクリック)では実施しているが、もう一度諸先輩の本をゆっくりと紹介しながら、何が必要かを検証したいと思います。
 その第2回目に選んだのが、西山松之助氏監修の『図説忠臣蔵』です。西山松之助氏の実家は旧赤穂郡有年村といいます。私の実家と同郷になり、私の父母より西山先生の話をよく聞かされておりました。 先生の著『しぶらの里』(昭和57年発行。吉川弘文館)には『「しぶらの里」(有年村のこと)に帰ってみますと、新国道になり、橋も道も全く変り、千種川の流路も淵瀬も昔の姿はなく、川原も全く変りはててしまいました。それでもなお、「しぶらの里」はすばらしいふる里です』と書いています。
 
監修は西山氏、執筆者は多士済々、そうそうたるメンバー
 まず年齢順に紹介しましょう。西山氏(1912年)を筆頭に、主な執筆者は大石神社宮司飯尾精氏(1920年)、前吉良町教育長大渓紀雄氏(1924年)、米沢市史編纂委員小野榮氏(1928年)、東京都江戸東京博物館長竹内誠氏(1932年)、赤穂市史編纂室長矢野圭吾氏(1947年)、赤穂市史編纂室主幹三好一行氏(1950年)、赤穂市立歴史博物館学芸員小野真一氏(1962年)です。赤穂を中心に、吉良町、米沢市、東京都の行政の直接の責任者が集まっているのが、著作権をクリアする点ですごいと思います。
先ず西山氏の「日本人と忠臣蔵」の紹介
 西山氏は赤穂市史の別巻を担当している。そんな関係で、「国内各地をくわしく歩き回り、…ロンドンやパリへも行った」という。以下調査の一部を紹介します。
 四国の宇和島では、を煮干とか乾燥肥料として播州の揖保の糸素麺との交換が盛んになり、今も忠臣蔵が演じられているという。高知には絵金の歌舞伎村があり、忠臣蔵が盛んに行われた。
 紀州では忠臣蔵も盛んに演じられていた。
 東海や九十九里など各地の神社には忠臣蔵の大序とか討入りの絵馬が残っている。
 仙台の市立博物館には忠臣蔵の堤人形(陶製の人形)という、地方色豊なすばらしい人形が所蔵されている。
 宮津市の智恩寺文殊堂に奉納された忠臣蔵の絵馬は1715(正徳5)年となっている。忠臣蔵の絵馬としては最初のものと報告されている。
 沖縄でも江戸時代以来の忠臣蔵を記録できた。
史跡紹介(カラー版)、先ず赤穂から
 赤穂城の大手門と隅櫓(赤穂市提供)、赤穂城天守台、赤穂城本丸門、赤穂城清水門、大石邸長屋門、赤穂城請取り行列図(大石神社提供)が紹介されています。。
史跡紹介(カラー版)、次は郡山、京都、山科を紹介
 郡山では梶本陣、山科では浅野内匠頭の供養塔・大石良雄隠棲舊址の碑・同遺髪塚・大石家先祖の墓、京都では円山公園内の寺井玄渓の「夢」碑と撞木町郭の碑が紹介されています。
史跡紹介(カラー版)、次は江戸
 本所の吉良邸の跡、泉岳寺の山門、大高源五筆「円相」、茶道宗■(へん)流の瀬戸茶入「銘山桜」(不審庵提
)が紹介されています。
史跡紹介(カラー版)、次は吉良、諏訪
 吉良町では吉良義央の墓・華蔵寺、諏訪では吉良義周の墓が紹介されています。
史跡紹介(モノクロ版)、先ず赤穂から
 大石邸の庭、赤穂城本丸門(明治初期の写真。花岳寺提供)、高取峠からの眺望、赤穂城大手門(明治初期の写真。花岳寺提供)、花岳寺、山鹿素行の像、片岡源五右衛門宅の碑、間瀬久太夫宅の碑、勝田新左衛門(宅)の碑、大野九郎兵衛宅の碑、尾崎の大石仮寓地、息継井戸、が紹介されます。
史跡紹介(モノクロ版)、次は郡山、京都、山科を紹介
 郡山宿本陣、山科の大石隠棲地・浅野長矩の墓碑、京都の撞木町郭の跡・花遊小路、瑞光院の碑(本来地)が紹介されています。
史跡紹介(モノクロ版)、次は江戸
 吉良上野介の墓、大石内蔵助の墓石、泉岳寺の地蔵、泉岳寺における浪士の墓碑、高田馬場の堀部武庸加功遺蹟碑、江戸城本丸の跡、松之廊下の碑、泉岳寺山門、泉岳寺の浅野内匠頭長矩の墓碑が紹介されています。
史跡紹介(モノクロ版)、次は吉良、諏訪
 吉良では華蔵寺・岡山陣地の跡地・吉良義央・義周の墓、諏訪では法華寺・吉良義周の墓が紹介されています。
史跡紹介(モノクロ版)、次は米沢
 上杉綱勝像(鳳薹寺提供)、上杉家墓所、米沢城の堀が紹介されまていす。
史跡以外の忠臣蔵の世界も紹介
 歌舞伎に精通している服部幸雄氏が「『仮名手本忠臣蔵』のすべて」、浮世絵に実績を残す浅野秀剛氏が「浮世絵『忠臣蔵』制作とその背景」、江戸に詳しい吉原健一郎氏が「赤穂浪士は、いかにして江戸の潜伏したか」、かわら版蒐集研究家の中山榮之輔氏が「かわら版『忠臣蔵』の噂」などを、写真を多用しながら解説している。なかなか読み応えがあります。
この書の問題点
 私が未だ行ってなかったり、貴重な史跡が紹介されています。ただこの書の問題点も列記しておきます。
 編集が統一されていないのか、行政の責任者(実力者)に一任したためか、カラーとモノクロで同じ史跡が紹介されたり、上野介と義央、内匠頭と内匠頭長矩など表記が一致しなかったり、墓所と墓碑など表記が混同している。また、金沢のカラー版が皆無である。

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